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東京を巡る対談 月一更新

束芋(現代美術家)×平本正宏 対談 日常の中の「隠れた衝動」を引き出す

<コラボレーションの新しい可能性>

平本 束芋さんは今どういう時期?

束芋 今年は、コラボレーションさせてもらうプロジェクトが3つ。今回コラボレーションさせてもらう相手は、みんなそれなりに長い付き合いになってきている人たち。建築家の永山祐子さん、漫画家のほしよりこさん、ダンサーの森下真樹さん、あと、写真家の杉本博司さん。杉本さんの『杉本文楽』の映像を担当させてもらうの。

どれも突然コラボレーションしましょうってくる話じゃなくて、まず、何かのきっかけで出会いがあって、人間関係が自然に続いていく中で、たまたま今年、実現したコラボレーション。いままでもどちらかが「やろう!」と言い出せば可能性はあったのだと思うけど、でも、「機は熟した」という感じで、今年3つ同時にプロジェクトが進んでいくのは、何かあるんだろうな、と。

平本 こういうコラボレーションが重なるような時期っていままでにはなかったの?

束芋 うん、なかった。自分の制作の中で1つくらい誰かとやるっていうことはあったとしても、3つのプロジェクトが時期を同じくして、一度に進むというのは初めて。逆に作品を発表する個展なんかは、今年は無いの。誰かと一緒にやるのってすごく大変だなと感じてる。

平本 そうだね。音楽制作だと、大体全仕事の半分以上が、映画とかダンスとか何かに付随する音楽だから、その大変さは結構わかるかな(笑)。

束芋 でも、ある意味、3つのプロジェクトが同時に立ち上がったっていうのは、いま3つ一緒にできるくらいの力を蓄えたのかなって、結果的にそういうことであればいいなとは思うけど。

平本 時期的には被っているの? 3つ同時並行?

束芋 うん、同時並行で。今年の夏が永山さん、ほしさんとの宇和島のプロジェクトで、秋が森下さんのダンス、同じ時期に杉本さんの文楽作品が発表になる。

平本 完全に同時並行だね。

束芋 そうそう。だからこの数日間はこっちをやって、次の数日間はあっちのことをやって、という感じの毎日。アニメーションも、ある程度の原画を描き進めたら、次は違うプロジェクトのものをやっていかないと、ちょこちょこ入ってくる打ち合わせに間に合わない。それまでに見せられるものをできるだけ作っていく、という感じで。

平本 そういう同時並行だからこそ出てくるアイディアっているのもありそうだよね。

束芋 なくはない。アニメーションって描く量が半端ない。同時並行で何作品も作ってると、時間も限られる。そんな中で、過去に発表した作品を作る際に描いたモチーフは、全部私のモノだから、いかようにでも使いこなせる。技術的な選択としては、「時間がない」という状況下で仕方の無い選択であったとしても、その追いつめられた選択が新しいアイデアに展開することが良くある、というか、新しいアイデアに展開しないと、新しい作品にはなっていかないよね。

平本 なるほど。この間、浜離宮ホールで行われたピアニストのパスカル・ロジェさんと束芋さんのコラボレーションコンサートでも過去のモチーフはあったもんね。

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