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東京を巡る対談 月一更新

成田憲保(天文学者)×平本正宏 対談 未知なる惑星を求めて

成田憲保(天文学者)×平本正宏 対談

収録日:2014年11月4日

収録地:国立天文台 三鷹キャンパス

撮影:moco

<生命居住可能惑星を探す>

平本 系外惑星の研究をされているということで、今日お話を伺えることをとても楽しみにしていました。ちょうど昨年の夏に、友人の建築家とグリーゼ581d&gを基に第2の地球をテーマにした美術作品を作ったくらい、興味がありまして。今月末公開の映画『インターステラー』も第2の地球を探すストーリーのようですし、改めて人類は地球以外の惑星で生活する未来は来るのか、我々のような知的生命体が宇宙にはいる/似たような環境はあるのかということに注目が集まる気がしているんです。

早速ですが、現状としてはどこまで解明されているのですか。

成田 現状としては、本当に第2の地球と言えるものはまだ見つかっていなくて、今から探そうとしているという段階ではあるんですが、これまでにも違うとは言えないまでも第2の地球に近いという惑星は見つかっています。

平本 グリーゼとかですか。

成田 そうですね。ただ、グリーゼ581gは実はノイズを惑星として誤認してしまっているんじゃないかとも言われていたりします。惑星系の親星、つまり母星からの距離がちょうど良くて、液体の水が存在できる領域をハビタブルゾーンといって、そこにある惑星をハビタブルプラネット、別名を生命居住可能惑星というのですが、それらはいくつか発見されています。だけど、あるということは分かっているんですが、今までに発見されたそういう惑星は地球よりかなり質量が重かったり、地球に似ていると言われる惑星が見つかってもかなり遠いところにあったりします。2014年の4月にはケプラー宇宙望遠鏡の観測で「地球といとこ」と呼ばれるような惑星も発見されています。

平本 その惑星に水はあるんですか。



成田 水はまだ確認できてないんです。水があったとしたら、液体の形で存在してもおかしくない領域にある惑星ではあります。その惑星にはどういう世界が広がっているのか、どんな大気を持っているのかとか、最終的には生物は存在しているのかどうかというのが、天文学者が知りたい謎の一つではあるんですけども、これまでに発見されている惑星では確認することが難しいのです。そこで今後はもっと太陽系に近いところにある星の周りで、ハビタブルプラネットを探そうというのがこれからの研究の流れなんです。太陽系に近いところにあれば、惑星のこともより詳しく調べることが出来ますから。

平本 太陽系に近いというのは大体どれくらいの距離を想定しているんですか?

成田 なるべく近くと言っても大体50光年以内ですね。

平本 近いといわれてもそれだけの距離があるのですね。4月に見つかった惑星はどれ位先なんですか?

成田 大体500光年くらいですね。

平本 500光年(笑)!! そうなると、アプローチしづらくなりますよね!

成田 そうですね。あることはあるんですけど、大気があるかどうか調べることはほぼ不可能になってしまうので、今後できる予定のTMTの30メートル級の望遠鏡であっても、それぐらい遠いところになってしまうと、どういう惑星か詳細を調べるのは難しいですね。

平本 50光年先というのを想定すると、発見の可能性はどれほどあるのでしょう? 可能性は高いのですか?

成田 太陽から50光年くらいの範囲でも、1000個以上の恒星があるんです。その中でどれだけハビタブルプラネットがあるかというと、正確にはまだ分かっていません。分かってはいないんですが、太陽系の近くにある恒星というのは、太陽よりは大分温度が低いんですね。そういう星は結構ハビタブルプラネットを持つ可能性が高いと言われています。まだ誤差がかなり大きいんですが、高い見積もりをしている研究者だと、50パーセントはあるだろうと推定しています。そうしたら50光年以内にもハビタブルプラネットが数百個あるかもしれないということです。その統計的な数も完璧ではないので、その数値も今後の観測で同時に明らかにしていく予定です。

平本 それは望遠鏡の精度が上がってくると、正確になってくるということですよね。

成田 そうです。実はですね、低温の恒星というのはちょっと特徴的なんです。まず太陽は我々が目で見ることができる可視光を放っています。しかし低温度星というのは、可視光ではほとんど輝いていないんです。可視光では暗いんですが、私達の目には見えない近赤外線では可視光よりすごく明るく輝いているんです。なので近赤外線で色々観測する装置が必要になってくるんですが、今まで赤外線の方で観測できる良い装置がなかったんですね。系外惑星を探すにはいくつかの方法があるんですが、最初に惑星を発見したのは光のドップラー効果を使ったもので、ずっと可視光で観測をして見つけていたんですよ。だけど、これから探すターゲットは可視では暗くて、可視光を使っていると、良い装置でも精度がなかなかでない。精度を上げないと、惑星を発見することが出来ないので、可視の装置では低温度星をターゲットにする場合には不利になってしまう。そこで赤外線で精度良くドップラー効果を測定するような装置が出来れば、太陽系の周りにあるハビタブルプラネットを探すことが出来ます。

平本 その装置はもう開発されているんですか?

成田 今開発中で、実際私のいる国立天文台の太陽系外惑星探査プロジェクトというところがすばる望遠鏡に載せるための赤外線でドップラー効果を測定する装置を作っていて、来年の2015年には試験観測ができればいいなと思っています。

平本 来年ということは現時点でもかなり良いところまでいっているということですよね!

成田 そうですね。計画はだいぶ進んでいます。

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